触れてはいけない、君に ――しかし触れなければ生きていけない、僕たちはもう二人でひとつなのだから――

触れてはいけない、君に ――しかし触れなければ生きていけない、僕たちはもう二人でひとつなのだから――

last updateHuling Na-update : 2025-12-19
By:  佐薙真琴Ongoing
Language: Japanese
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センチネルとガイド。超能力者とその調整者。 国家に管理され、月に一度の調整セッションを義務付けられる。それが、御厨リョウと氷堂カイトの出会いだった。 触れることを嫌うリョウ。しかし、カイトに触れた瞬間、世界が変わった。 月一度の調整は、やがて毎日に。二人の境界は溶け、魂が混じり合っていく。これは「ボンディング」――法律で禁止された、魂の結合。発覚すれば、強制分離。あるいは、処刑。 「君を離さない」 カイトの執着は、愛か。それとも依存か。 「あなたなしでは、生きられない」 リョウの告白は、真実か。それとも洗脳か。 触れれば生きられる。離れれば死ぬ。これは、究極の愛の物語。

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Kabanata 1

序章:運命の接触

...

Enceinte de plusieurs mois, je me suis traînée sur le sol, rampant vers la lourde porte en acier. Au moment où la lourde porte s'est refermée dans un bruit assourdissant, mes doigts se sont coincés dans le cadre.

J'ai entendu le craquement écœurant des os.

Une nouvelle vague de douleur m'a traversée, surpassant le supplice causé par la drogue. Un cri perçant s'est échappé de ma gorge.

Mais Victor ne pensait qu'à Charlotte. Il était sourd à mes cris.

Soudain, un liquide chaud s'est mis à couler. Je savais que j'ai perdu les eaux.

La peur, froide et absolue, m'a envahie.

Ma seule source de lumière était la faible lueur verte fantomatique d'un seul panneau de sortie de secours au-dessus de la porte.

Je me suis forcée à rester calme, frappant à la porte et criant à l'aide.

Mais c'était la salle d'opération privée de Victor, isolée et insonorisée, plongée dans une obscurité presque totale, sans fenêtre sur le monde extérieur.

Personne ne pouvait entendre mes cris qui s'affaiblissaient.

Le bébé dans mon ventre a violemment donné des coups de pied, comme s'il essayait de s'échapper de cette prison froide.

J'étais trempée, mais je ne savais pas si c'était de sueur ou de sang.

Les toxines contenues dans le médicament qui supprimait les contractions sapaient mes forces, me vidant de ma vie à chaque seconde qui passait.

J'ai rassemblé mes dernières forces pour pousser un dernier cri désespéré.

Enfin, j'ai entendu des pas à l'extérieur.

« Aidez-moi, s'il vous plaît ! » ai-je hurlé d'une voix rauque. « Je suis enfermée dans la salle d'opération ! Je suis en train d'accoucher ! »

Je l'ai répété encore et encore, pensant que mon sauveur était arrivé.

Mais une voix m'a répondu, empreinte d'une joie sadique.

« Alors, alors, Élisa. Regarde l'état pathétique dans lequel tu es, Victor aurait dû t'apprendre à obéir depuis longtemps. »

C'était la sœur de Victor, Gina.

J'ai fermé les yeux, luttant pour garder ma voix stable. « Gina, s'il te plaît, laisse-moi sortir, le bébé arrive, je ne peux pas tenir. »

Gina a poussé la porte et m'a dévisagée, la mine méprisante.

L'espace d'un instant, j'ai cru qu'elle pourrait m'aider.

L'instant d'après, elle m'a enfoncé son pied dans les côtes. Le coup m'a coupé le souffle et j'ai vu des taches noires danser dans mon champ de vision.

Sa voix était aussi tranchante que la lame d'un rasoir.

« Te laisser sortir ? Pour que tu puisses gâcher l'accouchement de Charlotte ? Ne bouge pas, Élisa. Victor m'a envoyé pour te surveiller. »

« Tu n'es pas faite pour être la femme de Victor. Il voulait que je m'assure que tu restes à ta place et que tu réfléchisses à ce que tu as fait. Victor a déjà assez à faire sans que tu lui causes plus de problèmes. »

« L'enfant de Charlotte sera l'héritier de cette famille, tes petites combines n'y changeront rien. »

Une autre contraction violente m'a arraché un cri.

Les larmes ont coulé sur mes joues alors que je haletais : « Mon enfant ne fera pas partie de l'entreprise familiale, je renoncerai à tout ! Fais passer un message à Victor, laisse-moi partir, je disparaîtrai de cette famille et ne reviendrai jamais en arrière, je le jure. »

Mes cris semblaient l'exaspérer.

Elle s'est renfrognée. « Salope, qui penses-tu séduire avec tout ce bruit ? Pathétique. »

Puis elle a activé son talkie-walkie et a contacté Victor.

L'agonie combinée de la drogue et de l'accouchement imminent était en train de déchirer mon âme.

« Pas de problème, Victor, ne t'inquiète pas. Je vais la surveiller de près. » a-t-elle répondu.

Lorsque j'ai entendu la voix de Victor, une lueur d'espoir s'est allumée en moi. Il devait se soucier de moi, il devait se soucier de notre enfant.

J'ai crié de toutes mes forces : « Victor ! Le bébé arrive ! Tout de suite ! S'il te plaît, demande à Gina de m'emmener à l'hôpital ! Tout de suite ! »

J'ai crié, ma voix tremblant faiblement et de façon incontrôlable.

Gina a hésité, je l'ai entendue chuchoter dans le talkie-walkie : « Victor, je commence à penser que c'est vrai. La façon dont elle crie... Je ne crois pas qu'elle fasse semblant. »

« Je devrais peut-être l'emmener à l'hôpital, c'est ton seul enfant, après tout. Si quelque chose arrivait... »

Victor a marqué une pause de quelques secondes, comme s'il réfléchissait à la question.

Puis son ton s'est adouci. « Bien, tu peux l'emmener... »

A ce moment-là, une voix délicate a murmuré de son côté. « Victor, chéri, j'ai soif. Peux-tu m'apporter du champagne ? Le médecin dit que je dois me détendre si je veux avoir la force d'accoucher de notre petit prince. »

« Oh, Élisa est en train d'accoucher ? Ce n'est rien, chéri, ça ne fait même pas mal. Honnêtement, j'ai l'impression que je pourrais m'entraîner pour un marathon. Élisa est une femme forte, elle ira bien. »

Bien sûr, elle n'a pas souffert.

Toute l'équipe médicale et les ressources de la famille avaient été détournées vers sa somptueuse salle d'accouchement privée, à la pointe de la technologie.

Elle recevait le traitement d'une reine.

Les quelques mots de Charlotte ont suffi à tout changer, à faire changer Victor d'avis.

Sa voix est devenue glaciale.

« Comment cela pourrait-il être mal ? C'est un acte, elle essaie de te piéger pour que tu la laisses sortir. Ne la crois pas, lui faire confiance te fera passer pour un imbécile. »

Le talkie-walkie s'est éteint.

Piquée par la réprimande de Victor, Gina a retourné sa fureur contre moi.

Elle a fouillé dans un étui en cuir et en a sorti un serpent, s'avançant vers moi.

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序章:運命の接触
 雨が降っていた。 御厨リョウは傘も差さずに立っていた。濡れた髪から滴る雫が頬を伝い落ちるのも気にせず、彼はただ目の前の光景を凝視していた。 東京湾岸の工業地帯。廃棄された倉庫群の一角が、異様な光に包まれていた。青白い、まるで生き物のように脈動する光。それは人間の感覚器官が捉えるべきではない何かだった。空気が震え、リョウの鼓膜が痛んだ。 センチネルだ。 リョウの脳裏にその単語が浮かんだ瞬間、倉庫の壁が内側から弾け飛んだ。 中から現れたのは、一人の男だった。 黒いスーツに身を包んだ長身の男は、両手で頭を抱えてうずくまっていた。その周囲の空間が歪んでいた。いや、歪んでいるというより、存在そのものが世界から剥離しかけているように見えた。 これが能力の暴走――リョウは研究者として、その現象を何度も映像で見たことがあった。センチネルと呼ばれる超感覚能力者は、極度のストレス下で自己の能力をコントロールできなくなる。そして周囲の生命体を無差別に攻撃する。 男の周囲に、黒服の集団が展開していた。センチネル管理局の制圧部隊だ。彼らは特殊な装備を身につけているが、それでも男に近づくことができずにいた。「氷堂センチネル! 応答してください!」 拡声器からの呼びかけに、男は反応しない。ただ苦しげに喘いでいる。 リョウは一歩、また一歩と、男に近づいていた。 自分でも理解できない衝動だった。研究者として、彼はガイドという存在について知識を持っていた。センチネルの能力暴走を鎮めることができる、特殊な資質を持つ人間。しかしリョウ自身がその資質を持つとは思っていなかった。むしろ、彼は人に触れられることを極度に嫌う性質だった。 それなのに。 それなのに、この男に触れなければならないという確信が、リョウの足を前に進ませていた。「そこの民間人! 危険です、後退してください!」 制圧部隊の声が聞こえた。しかしリョウの耳には、別の音が届いていた。 男の、心臓の音。 いや、正確には心臓の音などリョウの耳に届くはずがない。それでも確かに、彼には聞こえていた。速すぎる鼓動。悲鳴のような、助けを求めるような、そんな音。 リョウは走り出していた。 制圧部隊の制止を振り切り、歪んだ空間の中へ。肌が焼けるような感覚があった。五感すべてが混乱し、視界が白く染まった。 それでもリョウ
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第1章:契約の檻
 調整セッションが行われる部屋は、驚くほど普通だった。 リョウが想像していたのは、研究施設のような無機質な空間だった。しかし実際に案内されたのは、まるで高級ホテルのスイートルームのような部屋だった。柔らかな間接照明。落ち着いた色調のソファ。窓からは東京の夜景が一望できた。「ここで……調整を?」 リョウの疑問に、案内役の職員は頷いた。「センチネルとガイドの調整には、リラックスした環境が必要なのです。ストレスは能力の不安定化を招きますから」 職員は部屋の奥のドアを指差した。「あちらが寝室になっています。ベッドでの調整を希望される場合は、そちらをご利用ください」「ベッド?」 リョウの声が裏返った。「調整に、ベッドが必要なのですか?」「必ずしも必要ではありませんが」 職員は平然と答えた。「肌の接触面積が大きいほど、調整の効率は上がります。ですから、多くのペアは横になった状態で調整を行います」 リョウは喉が渇くのを感じた。 肌の接触。横になった状態。それらの言葉が、彼の中で別の意味を持ち始めていた。「服は……」「着たままで構いません。ただし、肌と肌の距離が近ければ近いほどいいので、薄着を推奨します」 職員はタブレットを操作し、リョウに画面を見せた。「これが標準的な調整の手順です。まず、手を繋ぐことから始めます。次に、額を合わせる。そして最終的には、抱擁の姿勢で全身の接触面積を最大化します」 画面には、センチネルとガイドのペアが、段階的に接触を深めていく様子が図示されていた。最後の段階では、二人が完全に抱き合っていた。「これは……」「セクシャルな意味はありません」 職員は断言した。「あくまで医療行為です。センチネルの能力を安定させるための、必要な処置です」 医療行為。 そう言われても、リョウの心臓は激しく打っていた。「では、氷堂センチネルをお呼びします。何か質問はありますか?」「いえ……」 リョウは首を横に振った。聞きたいことは山ほどあったが、どれも口にできなかった。 職員が部屋を出て行った。 一人になって、リョウは深く息を吐いた。手のひらに汗が滲んでいた。 落ち着け。これはただの医療行為だ。感情的になる必要はない。 そう自分に言い聞かせながら、リョウはソファに座った。窓の外の夜景を眺めようとして、ドアが開く音に
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第2章:調整という名の依存
 調整の頻度が、また変わった。 二週間に一度だったものが、一週間に一度になった。さらに三か月後には、週に二度になった。 そして今、リョウは毎日、カイトに会っていた。「これは異常です」 リョウは医療チームのリーダーである如月医師に訴えた。「契約では月に一度だったはずです。それが毎日なんて」「氷堂センチネルの能力が不安定化しているのです」 如月医師は冷静に答えた。「彼のような高位センチネルは、常に能力の暴走リスクを抱えています。あなたの調整なしでは、彼は社会生活を送ることができません」「でも……」「御厨さん」 如月医師はリョウを真っ直ぐに見た。「あなたは、調整を苦痛に感じていますか?」 その質問に、リョウは答えられなかった。 苦痛、ではない。むしろ逆だった。調整の時間は、リョウにとって一日で最も充実した時間になっていた。カイトに触れ、カイトと繋がり、カイトの中に溶けていく。 それは確かに、気持ちよかった。「調整自体は問題ないのです」 リョウはようやく口を開いた。「ただ、これが本当に必要なのかと。もしかして、カイトが……故意に能力を不安定化させているのではないかと」「それは重大な告発ですが」 如月医師の表情が硬くなった。「何か根拠があるのですか?」「いえ……ただ、感覚的に」「感覚は、証拠になりません」 如月医師は断言した。「氷堂センチネルの能力の不安定性は、客観的なデータで証明されています。彼があなたを必要としているのは、事実です」 その言葉を聞いて、リョウの胸に複雑な感情が渦巻いた。 必要とされている。 それは、悪い気分ではなかった。むしろ、どこか満たされるような感覚があった。 しかし同時に、恐怖もあった。 こ
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第3章:境界の溶解
 それは、調整を始めて半年が経った頃に起こった。 リョウは目を覚まし、自分がどこにいるのか分からなくなった。 見知らぬ天井。見知らぬ部屋。しかし、違和感はなかった。むしろ、ここが正しい場所だという確信があった。「目が覚めたか」 声がして、リョウは首を巡らせた。 カイトが、ベッドの傍らの椅子に座っていた。ラップトップを膝に置き、何か作業をしている。「ここは……」「俺の家だ」 カイトは画面から目を離さずに答えた。「君は昨夜の調整の後、気を失った。だから、そのままここに運んだ」 リョウは身体を起こそうとして、奇妙なことに気づいた。 自分の服が、変わっていた。 昨夜着ていたシャツとパンツではなく、大きなTシャツ一枚。それも、明らかに男物だった。「これは……」「俺のシャツだ」 カイトがようやく顔を上げた。「君の服は汗で濡れていたから、着替えさせた」「着替え……させた?」 リョウの顔が、熱くなった。「誰が?」「俺が」 カイトは平然と答えた。「他に誰がいる?」「それは……」 リョウは言葉を失った。カイトが、自分の服を脱がせて、着替えさせた。つまり、自分の裸を見られたということだ。「心配するな」 カイトは小さく笑った。「何もしていない。ただ服を替えただけだ」「それが問題なんです!」 リョウは叫んだ。「私たちの関係は、医療行為の範囲内です。それを超えるようなことは……」「医療行為だ」 カイトが遮った。「汗で濡れた服を着たままにするのは、健康上よくない。だから着替えさせた。医療行為だ」 屁理屈だった。しかしリ
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第4章:偽りの均衡
 それから二ヶ月間、リョウとカイトは奇妙な均衡状態を保っていた。 表向きは、センチネルとガイドのペア。調整セッションを定期的に行う、医療行為の関係。 しかし実際には、恋人同士と変わらない生活を送っていた。 朝は一緒に目を覚まし、朝食を共にする。カイトが任務に出る時は、リョウは彼の無事を祈る。夜は抱き合って眠る。 ただし、セックスだけはしなかった。 それが、二人の最後の防波堤だった。肉体関係を持たないことで、自分たちはまだ一線を越えていないと信じようとしていた。 しかし実際には、既にその一線など存在しなかった。「センチネル管理局から、定期検査の通知が来ている」 ある朝、カイトがタブレットを見ながら言った。「年に一度の、ペア適合性検査だ」 リョウの手が、コーヒーカップの中で止まった。「検査……」「ああ。俺の能力の安定性と、君とのペア適合率を測定する」 カイトは平然と続けた。「それと、ボンディングの有無も調べられる」 リョウは息を呑んだ。「それは……」「避けられない」 カイトはタブレットを置いた。「定期検査は法律で義務付けられている。拒否すれば、契約解除になる」「でも、もしボンディングが見つかったら……」「分離処置だ」 カイトは冷静に答えた。「あるいは、処刑」 処刑。 その言葉が、リョウの胸に突き刺さった。 ボンディングは、センチネルとガイドの関係における禁忌中の禁忌だ。なぜなら、ボンディングしたペアは、国家の管理下から逸脱するから。 分離できないということは、どちらか一方を失えば両方が死ぬということだ。それは国家にとって、貴重なセンチネルの戦力を失うリスクになる。 だから、ボンディングは違法とされた。「どうする?」
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第5章:暴露
 リョウは走った。 雨に打たれながら、息も絶え絶えに、ただ前へ。背後からは執行部隊の足音とサイレンの音が追いかけてくる。 スマートフォンがポケットの中で震えた。カイトからのメッセージだ。 『座標を送る。そこで待て』 画面に表示された地図を見て、リョウは方向を変えた。湾岸地区。あの日、カイトと初めて出会った場所の近くだ。 足が重かった。禁断症状による脱力感が、全身を支配している。カイトと離れて五日。リョウの身体は既に、限界を超えていた。 それでも走った。 廃ビルの影に身を隠し、追跡者が過ぎるのを待った。雨音に紛れて、彼らの無線のやり取りが聞こえてくる。「対象を見失った」「周辺を封鎖しろ。逃がすな」 リョウは歯を食いしばった。 カイトの指定した座標は、ここから二キロ先。たった二キロ。しかし今のリョウには、途方もなく遠い距離だった。 携帯が再び震えた。今度は着信。カイトだ。「リョウ」「カイト……」 リョウの声は、掠れていた。「動けません。身体が……」「分かってる」 カイトの声が、苦しげに響いた。「俺もだ。任務中、何度も能力が暴走した。君なしでは、もう制御できない」「私も……あなたなしでは」 リョウは壁に背中を預けた。立っているのがやっとだった。「五日間、地獄でした。頭が割れるように痛くて、吐き気が止まらなくて……」「すまない」 カイトの声が、震えた。「俺のせいだ。俺が君をこんな状態にした」「違います」 リョウは否定した。「これは、私たち二人の選択です。誰のせいでもありません」 遠くでサイレンの音が近づいてきた。リョウは息を潜めた。「カイト、あとどれくらいで…&hellip
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第6章:禁忌の烙印
 気がつくと、リョウは見知らぬ場所にいた。 古い日本家屋。畳の部屋。障子から差し込む柔らかな光。「ここは……」「俺の、隠れ家だ」 カイトの声がして、リョウは振り向いた。カイトは窓の外を見ていた。「山の中。最寄りの町まで車で一時間。センチネル管理局も、ここの存在は知らない」 リョウは身体を起こした。全身の力が抜けていたが、カイトが近くにいるおかげで症状は治まっていた。「どうやって、こんな場所を……」「三年前、任務で訪れた時に見つけた」 カイトは振り返った。「いつか必要になるかもしれないと思って、秘密にしてきた」「いつか……って、まさかこんな日が来ると?」「ああ」 カイトは頷いた。「君と出会った時から、こうなることは分かっていた」 リョウは息を呑んだ。「つまり、あなたは最初から……」「逃亡することを、視野に入れていた」 カイトは認めた。「君をボンディングに導き、そして一緒に逃げる。それが、俺の計画だった」 リョウは何も言えなかった。 すべてが、カイトの計算の内だった。出会いも、調整の頻度の増加も、ボンディングへの誘導も。「怒っているか?」 カイトが尋ねた。「俺は君を騙していた。君の自由意志を奪い、俺に依存させた」 リョウは考えた。 怒るべきだろうか。自分は操られていたのだと、憤るべきだろうか。 しかし。「怒れません」 リョウは答えた。「なぜなら、私も同じことを望んでいたから」 カイトの目が、わずかに見開かれた。「最初は違いました」 リョウは続けた。「最初は、確かにあなたに触れることを嫌がっていました。でも、いつか
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第7章:追跡
 テレポーテーションの感覚は、溺れるようだった。 リョウの意識は引き伸ばされ、圧縮され、そして再構成された。吐き気と眩暈が同時に襲ってきて、リョウは気を失いかけた。 しかしカイトの腕が、しっかりとリョウを抱きしめていた。 その温もりだけが、リョウを現実に繋ぎ止めていた。 どれくらいの時間が経ったのか分からない。 気がつくと、リョウは固い地面の上に倒れていた。「リョウ」 カイトの声が聞こえた。「大丈夫か」「ええ……なんとか」 リョウは身体を起こし、周囲を見回した。 そこは、見知らぬ場所だった。 森。鬱蒼とした木々に囲まれた、人里離れた場所。空気が冷たく、澄んでいた。「ここは、どこですか?」「北海道だ」 カイトが答えた。「山奥の、誰も来ない場所」 北海道。東京から、千キロ以上離れた場所。「そんなに遠くまで……」「限界だった」 カイトは息を切らしていた。額に汗が滲んでいた。「これ以上遠くには、飛べない」 リョウはカイトの身体を支えた。カイトの身体が、熱を持っていた。「能力を使いすぎましたね」「ああ……でも、これで少しは時間が稼げる」 カイトは木に背中を預けた。「朝霧が追跡してきても、ここまで来るには時間がかかる」「でも、いずれは見つかる」「そうだ」 カイトは認めた。「俺の能力は、使えば使うほど追跡が容易になる。逃げれば逃げるほど、痕跡を残してしまう」 リョウは考えた。 このままでは、いずれ捕まる。時間の問題でしかない。「なら……」「なら?」「戦いましょう」 リョウは言い切った。
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第8章:銃口の前で
 記事は、予想以上の反響を呼んだ。 翌朝、三島の記事はインターネット上で爆発的に拡散された。 『愛は罪か――ボンディングしたセンチネルとガイドの告白』 記事には、リョウとカイトのインタビューが詳細に掲載されていた。二人の写真も公開された。 ソーシャルメディアは、瞬く間にこの話題で溢れた。 賛否両論。 「彼らは何も悪くない。愛し合う権利は誰にでもある」 「いや、法律は法律だ。センチネルは国家の財産なのだから、管理されるべきだ」 「ボンディングの危険性を無視するな。一人が死ねば二人とも死ぬんだぞ」 「それでも、強制的に引き離すのは人権侵害だ」 議論は白熱した。 そして、センチネル管理局も動いた。「氷堂カイトと御厨リョウを、国家反逆罪で指名手配する」 局長の記者会見が、全国に放送された。「彼らは、センチネル保護法に違反しただけでなく、機密情報を漏洩した。これは、重大な犯罪である」 指名手配。 リョウとカイトは、正式に犯罪者とされた。「予想通りだな」 カイトは冷静に言った。 二人は三島の手配した隠れ家――廃墟となったホテルの一室にいた。「でも、世論は私たちに同情的です」 リョウはノートパソコンの画面を見ていた。「ソーシャルメディアでは、私たちを支持する声が多数です」「それでも、法律は変わらない」 カイトが窓の外を見た。「世論がどうであれ、俺たちは指名手配犯だ。捕まれば、処刑される」 リョウは唇を噛んだ。 記事の公表は、諸刃の剣だった。世論は味方についたが、同時に居場所も知られてしまった。 その時、カイトの表情が変わった。「来る」「え?」「執行部隊だ」 カイトは立ち上がった。「朝霧も、一緒だ」 リョウは窓から外を覗いた。
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第9章:逃亡
 屋上での対峙から一週間が経った。 その間に、世界は大きく変わり始めていた。 リョウとカイトの映像は、瞬く間に世界中に拡散された。ソーシャルメディアでは、彼らを支持する声が圧倒的多数になった。「#FreedomToLove(愛する自由を)」というハッシュタグがトレンド入りした。世界中の人々が、リョウとカイトの物語に共感した。 そして、政治も動いた。 野党議員たちが、センチネル保護法の見直しを要求し始めた。与党内部でも、改正を求める声が上がった。 センチネル管理局は、世論の圧力に屈しつつあった。 しかし、リョウとカイトへの指名手配は、まだ解除されていなかった。 二人は、三島の手配した安全な場所――海沿いの古い民家に身を隠していた。「長くはもたないな」 カイトが言った。 二人は海を見ながら、並んで座っていた。波の音が、静かに響いていた。「どういう意味ですか?」「いずれ、センチネル管理局は俺たちを捕まえようとする」 カイトは説明した。「世論がどうであれ、法律が変わるまでは、俺たちは犯罪者だ」「でも、朝霧さんは撤退しました」「あれは、カメラがあったからだ」 カイトは首を横に振った。「次は、メディアのいない場所で襲ってくる」 リョウは不安を感じた。「なら、どうすれば……」「国外に逃げるしかない」 カイトは決断した。「センチネル保護法が施行されていない国に」「でも、それでは一生、日本に戻れません」「それでもいい」 カイトはリョウの手を取った。「君と一緒なら、どこでも生きていける」 リョウは考えた。 国を捨てる。家族を、友人を、すべてを捨てて、カイトと二人だけで生きていく。 それは、恐ろしいことだった。 しかし同時に、魅力的でもあった。
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